借金の館


日本のJICA(国際協力機構)即ちODA(政府開発援助)、即ち我々の税金によって作られた湖岸の露天風呂には誰もおらず丁度良い湯船と夕焼けを独り占めしながら幸せに浸った。横にある大きな食堂のある立派な建物にはここを管理する家族連れが住み込んでいたので夕食だけは中で取らせてもらったが中には泊めて貰えず水も凍るほど強烈に寒い外でテント泊した。朝になるとツアー客のランドクルーザーが10台くらい押し寄せてきて露天風呂も食堂も騒々しい白人旅行者で一杯になった。日本の税金が誰も知らない地球の反対側の標高5000mの温泉施設を作り、喜んでいるのはヨーロッパなどからの金持ちの観光客と観光業者だけ。納税者にとって極めて不透明なODAとそれを操作する日本政府には不信感しか抱かない。財政赤字1000兆円を越え今も増え続けていると言う日本がやるべき事は一部の人の利権を考えたり他の国に媚を売る事ではないことぐらいは誰が考えても明白だ。腐敗した官僚政治、役人の罪は重い。

 ボリビア人運転手は面白がって声をかけてくれたり挨拶をしたりするが、旅行者達はそ知らぬ顔でお互い干渉せず、本国の都会の雰囲気をそのまま持ち込んできた。秘境気分も台無しになったので出発することにしたがバッテリーが冷えて弱くなっており砂利道を押し掛けする羽目になった。空気が薄いから直ぐに息が切れて苦戦した。

 この日の夕方、ようやく道路らしい道路に出てボリビアで初めての村、素朴な先住民の住むAlota村の宿に泊った。宿代はたったの20ボリビアーノ(280円)。同じ宿に泊ったランドクルーザーの騒がしいツアー客12人、イギリス、ノルウェー、カナダ、オーストラリアのお洒落な若者達はすまし顔で挨拶もままならず、お高くとまって見えた。質素な生活をし、ちょっとはにかんだ人懐こい笑顔の静かなボリビア先住民とは対照的だった。サンチアゴで知り合ったオーストラリア人の友人ジョーダンが僕の事をボリビア人と間違えたのは当たらずしも遠からずかも知れない。僕は内面も外面もボリビア人の方に近い。