富が通過する橋


コブレスの近くに地上64mの鉄道のボルボリジャ鉄橋(Polvorilla)がある。サルタからの観光列車の目玉であり終着点だ。列車は標高1187mのサルタから、数々の鉄橋、トンネル、ループ、スイッチバックを経て標高4220mのここにたどり着く。コブレスの観光案内所で行き方を聞くと、それはチリ方面へ向かう道を途中を右に折れて20分くらいで着くと教えてくれた。しかし行けども行けどもそれらしき枝道が見付からない。途中何度か右に曲がる道に入ってみたが、行き止まりだったり元の道に戻ってしまったりだった。久々に出会った対向車を止めて聞くと大分行き過ぎているという。その測量工事の人が曲がる場所まで先導してくれた。そこは見覚えのある場所だったが何の標識も無く、道も頼りなく、コブレスを出て間もない場所だった。有名な観光地のはずだから看板があるだろうし、そこそこ広いしっかりした道だろうと勝手に想像していたのだが、こんな所を車やバイクで訪ねる人など殆ど居ないのだろう。案の定鉄橋までの20分、朽ち果てた鉱山があっただけで何も無い乾いた土地が広がっていた。鉄橋の手前で線路にあがりゴトゴトと枕木の上を走って鉄橋の上に出た。下には土産物屋が2軒あるが客は誰もいなかった。きっと日曜日に観光列車が来る時以外は殆ど誰も来ないだろう。
 線路はこの先もチリ方面に通じていたが今はもう使われておらず代わりに今は大きな送電線が通っている。朽ち果てた駅舎や風化した線路が寂しさをかもし出している。ロバに薪を載せたり、薪を持って家に向かって歩く女性を見た。
 鉱物や電気は線路や電線を伝って大都市の人達、金持ちを潤すだけで途中にあるコブレスのような先住民の小さな町を通り過ぎていくばかりだ。僕は社会主義者では無いけれど、強いものが正義、多数派が正義、そんな民主主義の名の下に正当化された格差社会に時々寂しさを感じる。