山岳地帯へ


LosAndesを離れ23号線の未舗装路に入るともう車も観光客も殆ど見ることは無くなる。川沿いの西部劇に出てきそうな風景の道は気持ちが良い。国境にあるAlumine湖は寂しげで観光地の雰囲気はもう無い。チリの国立公園のマークにもなっている不思議な枝の形をした木が現れ始める。だんだんと荒涼とした山岳地帯の雰囲気が広がってくる。前方の空に黒い雨雲と稲光が見え、そろそろ雷雨に突入するのが分かる。南米の秘境に来ている雰囲気を盛り上げてくれる。案の定激しい雨に迎えられるが、直ぐに雲から抜け出した。南米は気象のスケールも大胆だ。途中21号へ左折してCopahueの温泉を目指した。

 Copahueは密かな湯治保養地だ。泥湯や色んな種類の温泉に入れる大きな温泉施設のまわりに数十件の家が並ぶ程度の素朴な村だ。曇った天気と停電で村全体に色が少ない。温泉施設には医者やカウンセラーなどが居て、まるで病院のような雰囲気もある。先ず看護婦の問診を受け、健康状態や滞在日数などを申告するとお勧めの温泉を紹介してくれ、滞在中の入浴プログラムも提案してもらえる。料金は僕の場合泥湯温泉と緑色の温泉に入って、問診も含めてたったの10ペソ(350円)くらいだった。それぞれの温泉には係員がいて泥を縫ってくれたり名前を呼んで入浴時間の管理もしている。湯船の足元からはブクブクと泡が出ていて時々熱湯が出てきたり冷たかったりすることもあるが異国の温泉の雰囲気満点だ。村の外れにある無人の温泉の横で2晩キャンプをした。辺り一面から湯気が出ていて大きな岩の間には天然のサウナもある。テントの直ぐ横でもプクプクと湯が沸いている。標高は2000m近くて山には雪も残り夜はかなり冷え込むけれどテントの中は天然床暖房が効いていて少し暑いくらいだった。

 Copahueを離れて少し距離を稼ごうと思っていたけれど、景色が素晴らしすぎて写真を撮るために立ち止まったりしてなかなか前に進めない。観光客が殆ど訪れることはないであろうオレンジ色が眩しいAgrioの滝は、一大観光スポットになっても不思議ではない素晴らしさなのに山奥にあるばっかりに僕に独占されていた。ElCholarから東のChosMalalへ抜ける道も、遥か下に川を見ながらクネクネとした断崖絶壁の道の続く迫力満点のルートだった。