国道3号とキャンプ場


ガイマンから国道3号へは山の中の未舗装路を使いショートカットした。車は猛烈な埃を巻き上げるので会いたくなかったが60km走って3台の対向車にしか会わず、風は南西から吹いているので埃を浴びる事も無かった。しかし3号から東に逸れペンギンの営巣地プンタトンボまでの未舗装路の往復100kmは観光客の車が多く、道が悪く車はのろのろとしか走れないので埃を浴びては抜き浴びては抜きを繰り返し、体もバイクも荷物も真っ白になりうんざりした。3号に戻ってからも、定規で線を引いたようにいつまでも直線が続く景色の変わらない退屈な道と、アクセル全開で走る僕を猛スピードで追い抜いていく車やバスの多さにもうんざりした。もう少し排気量の大きなバイクだと楽だけれど、もし今度同じバイクで同じ道を通ることがあるのならばせめてアクセルを握らなくてもオートクルーズで腕を組みながら走れるように改造したい。風も徐々に強まり、向かい風で80km/hしか出ない時に速い車に抜かれるのは神経を消耗する。この頃からたまにバイク旅行者とすれ違ったり追い抜かれるようになったけれども彼らは皆排気量の大きなバイクだから僕を抜く時もあっという間に見えなくなるし、この退屈な区間を急いで通り過ぎてしまう様だった。彼らと会って話せるのはガソリンスタンドでの束の間の時間だけだった。この日から急激に風が冷たくなり、しっかりした防寒着を持っていなかったので夕暮れ時にコモドロ(Cdoro)のガソリンスタンドにたどり着いた時には芯まで体が冷え切っていた。つい数日前にはあんなに暑かったのに。振り返れば数日の間に随分と南下したものだ。>

近くのキャンプ場は熱いシャワーがあって快適で、黒人英語を話すオーナーと夜遅くまで話をしたりと楽しかったけれど15ペソ(500円)という今までに泊ったキャンプ場の4〜5ペソ程度の料金と比べてべら棒に高かった。オーナーにそんな話をしたら、ここはもうパタゴニアで全てが高いのだと言う。半分本当で半分は嘘だ。冬の厳しいパタゴニアでは観光客の多い夏場に稼がなくてはならない。しかし商売根性のまるでないキャンプ場もある。時々見かける町営キャンプ場に至っては熱いお湯のシャワーがあって無料で泊れるところもあった。僕は経験しなかったが田舎のガソリンスタンドは殆ど無料でキャンプ可能で、長距離トラックの運転手が夜を明かすためにシャワーもあるところが多い。何れにせよアルゼンチンはキャンプ旅行者にとって今最も快適な国だと思う。ブラジルやチリに比べて遥かに安いし、治安も良く、どの街でも大体キャンプ場を探すことができる。もちろん人のいない自然の中でもキャンプしたい放題だ。

 翌朝キャンプ場のオーナーに案内してもらいブレーキの部品を探しにバイク屋を廻ったけれども手に入らなかった。